Don't cry baby,please !!

少女フェミニストの備忘録

相沢沙呼『スキュラ&カリュブディス 死の口吻』 百合と少女の身体性

 今日は11月に読んだ『スキュラ&カリュブディス 死の口吻』をご紹介したいと思います。

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 相沢沙呼さんの小説は百合を漂わせる、(ライトな百合を誤読させるような)作品が多かったのですが、今回は本格的にダーク・ホラーで百合でした。一言で言えばごっつぁんです、なんですが。

 あらすじはこんな感じ。

 初夏。街では連続変死事件が起きていた。まるで狼に喰い千切られたような遺体。流通する麻薬。恍惚の表情で死んでいく少女たち。自らも死を求める高校生・此花ねむりは鈴原楓との出会いをきっかけに事件を調べ始める。だが、そこには3年前の殺人事件に繋がる驚愕の真実が隠されていた―。性と死、その果てに垣間見える少女の戦い。逸脱者たちが繰り広げる戦慄の新伝奇譚。(amazon 内容紹介より)

  10代に“ありがちな”死にたがりのねむりちゃん。自分の身体を嫌悪しながらも、その牢獄に繋がれている描写は、相沢沙呼さんの新境地を描いていると言ってもいいでしょう。相沢さんの、どちらかと言えば日常の悩みと謎をめぐるささやかな小説も好きなのですが、こんな死が近くにある小説も見事に描ききっています。

 私の好きなセックス、ドラッグ&ロックンロールな百合がまさしくこの『スキュラ&カリュブディス』には描かれています。

 少女の身体性、これがまた描くのが難しいんですよね。生々しく=わかりやすい性欲の表象っていう感じに陥りやすいのですが、相沢さんはそれを見事に回避しています。ドラッグ、変死体、食事シーン、ねむりと楓とのお風呂のシーン、後半に出てくる喫茶店の描写……「欲」というよりも「余剰」に目につけたところが少女の身体性という真に迫った描写がなされるんじゃないかしら、と私は思うのです(ねむりの部屋はまさしくクラシックな粗大ゴミという「余剰」にあふれている!)。

 多少グロテスクさを感じさせる物事はありますが、そこは描写でカバーされているので、10代の女の子が読んでも安心ですね(決して現実ではマネ出来ない殺し方をしているという一点に尽きる)。

 清原紘さんの挿絵も繊細な線で素敵です。「たしかにねむりちゃんこんなカンジ!」とイメージでも納得。

 とにかく百合において、少女の煩悶が男のものとして回収されていないし(むしろその逆)、その身体という牢獄がいかにねむりを縛り付けているか生々しく表現されていて、かつ百合。

 本当にごちそう様でした、と相沢さんに言いたいです。たぶんすごく書くの大変だっただろうなあと思いました(私も一介の百合文字書きだからネ)。

 全体的に百合マンガで言えば、大北紘子さんを匂わせる作風です(百合好きにはこう言えば伝わるハズ)。

 いろいろ解決されていない謎も多いので続刊に注目したいです。